映画エッセイ

映画を観て感じたことを軽い気分でつづります。

【映画】きみに読む物語|What do you want? 君は、どうしたい?

きみに読む物語 

What do you want? 君は、どうしたい?

10代までは、本気で何にでもなれる気がしていた。

20代で社会の不公平に気づき、

30代であがいてみるが、世の中は、そんなに簡単に変わらないと知る。

そして40代になってやっと、

世の中を変えなくても、自分の幸せはいつも目の前にあると気づいた。

これは間違いなく、良書や名作映画との出会いのおかげだ。

 

しかし、長年染みついた「こう見られたい」という思考のくせは、

今でも時々、「自分はどうしたいか」を隠してしまう。

一番克服したいのは、

「期待すると、何倍も傷つくから、最初から欲しがらない」という思考癖だ。

 

確かに、拒絶されることがないので傷つくことはないが、

周囲からは、いい面も悪い面も、自分の思いとは違う反応をされることが多い。

「えっと、そうではなくて…」

説明すれば誤解はすぐにとけるのだが、最初から「こうしたいです」と言っておけば

よかったのね、と思うことが多々ある。

 

それなのに、やはり「want to」を伝えるのに勇気がいる。

「ほしいと言ったり、ほしくないと言ったり、一体どっちなのさ」

「よくわかんない人だなぁ」

きっとそういう印象を与えてきたのだろう…。

 

自分を守るための防衛本能でもあるが、これを繰り返しているうちに、

自分がどうしたいかすら、わからなくなってくるのだ。

 

でももうね、そういうことは卒業したい。

 

自分がこうありたい、こういう人たちと仕事がしたい、こういう会社に勤めたい。

この年になってやっと、自分の価値観が見えてきた。

「いい年してさぁ」

色々、言われるかもしれないけど、自分の人生だから。

 

親の立場では、何ができるか。

良家の娘と材木屋で働く青年の恋。

時代からして、この恋を成就させるのは、今よりずっとハードルが高かっただろう。

娘の両親は、青年との仲を反対するが、人間的に毛嫌いしているわけではないようだ。

「ただでさえ苦労しそうなのに、愛だの恋だのでは、生活はできないんだよ!

今はいいけど、気持ちが冷めたらどうすんの。」

そんな風に、わが子を心配する両親の気持ちは、ひとりの親としてよくわかる。

傷ついてほしくないのだ。後悔してほしくないのだ。将来をよく考えてほしいのだ。

 

けれど、将来どうなるかは、誰にもわからない。

わかっていたとしても、経験させるしかない。

子どもの人生は、子どものものなのだ。

だからこそ、たとえ子どもの選択に反対だったとしでも、

それを伝える方法が、「ちからずく」であってはならないと思う。

 

主人公のふたりが離れている間、それぞれ素敵なお相手に出会っている。

多くを語るとネタバレになってしまうのであまり触れないでおくが、

私はこの「お相手たち」の幸せを心から願う。

 

キャスト

監督:ニック・カサヴェテス

出演:ライアン・ゴズリング, レイチェル・マクアダムス, ジーナ・ローランズほか

あらすじ

ある老人ホーム。初老を迎えてはいるが、未だに美しさを失っていないアリーは夢想に浸っている。そんなアリーに「もう寝る時間だよ」と優しく声をかける、デューク。彼は彼女の横に置いてあるノートを手に取り、やさしく読み始めるのだった。

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【映画】愛を読む人|原作『朗読者』を読んで、もっと深く理解したい。

愛を読む人

 

彼の中途半端な優しさは、多少なりとも彼女を救ったのだろうか…

馴れ初めは相当いかがわしいのだが、一緒に過ごすうちに徐々に満たされてく。

歳の差は21歳。

幸せそうに映るふたりの時間も、

若いマイケル青年にとっては「若気の至り」を積み重ねているだけのように思えて、

ちょっと切なかった。

 

ハンナが姿を消し、数年後に法廷で再会するのだが、

そこからのマイケルには「喝!!!」だ。

意気地がないというかなんというか…。

気持ちがどうであろうと、できることがあるのでは!!

とまぁ、若くない血をたぎらせて最後までマイケルに喝!をいれ続けたのだが、

若いマイケルには、やはり重すぎたとも思える。

 

他の人のレビューでは、最後の娘とのシーンに感動したというのが多かったが、

あそこで軽くイラっとした私は、ちょっとハンナに入れ込みすぎなのだろうか。

ネタバレはしたくないので、マイケルをディスるのはここまでにしておこう。

 

とにかく、前半部分は、やたら危なっかしいのと、ケイト・ウィンスレット

美しすぎるのとで、話があまり入ってこなかった。

ハンナの様子や行動から、教育の機会を与えられなかったのではないか

ということだけは、察しがついた。

 

「絶望」なのか「愛」なのか「懺悔」なのか。それとも他の感情なのか…

多分、原作『朗読者』にもはっきりとは描かれていないとは思うが、

原作を読んで、もっと近づきたいと思う映画だった。

キャスト

監督:スティーブン・ダルドリー

出演:ケイト・ウィンスレット, レイフ・ファインズ, ブルーノ・ガンツほか

あらすじ

1958 年のドイツ。15歳のマイケル(デヴィッド・クロス)は気分の悪くなったところを21歳年上のハンナ(ケイト・ウィンスレット)に助けられたことから、二人はベッドを共にするようになる。やがて、ハンナはマイケルに本の朗読を頼むようになりマイケルの想いは深まっていくが、ある日、彼女は突然マイケルの前から姿を消す。数年後、法学専攻の大学生になったマイケルは、ハンナと法廷で再会する。彼女は戦時中の罪に問われ、ある秘密を隠し通したために窮地に追いやられ、無期懲役の判決を受けるのだった。時は流れ、結婚と離婚も経験したマイケル(レイフ・ファインズ)は、ハンナの最後の“朗読者”になろうと決心し、彼女の服役する刑務所に物語の朗読を吹きこんだテープを送り続けるのだったが…
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【映画】ヴィンセントが教えてくれたこと|聖人:トンデモ爺さん。

ヴィンセント

 

「聖人」は、「人」に対してではなく、「行為」に対する言葉だと思う。

原題『St. Vincent』(聖人:ヴィンセント) 

聖人とは

一般的に、徳が高く、人格高潔で、生き方において他の人物の模範となるような人物のことをさす。Wikipediaより

トンデモ爺さんヴィンセントにはハラハラさせられた。

他人事だから見ていられるが、この隣人にわが子を預けるにはかなりの勇気が要る。

この爺さんからは、教育上、非常によろしくない匂いがプンプンしている。

 

ところがどっこい、知れば知るほど、ヴィンセントは慈悲深い人なのだ。

ヴィンセントの周りの人たちはみな、色々と事情を抱えている。

特に、ナオミ・ワッツ演じる「夜勤の人」との関係に合点がいってからは、

ヴィンセント爺さんに対する見方が180度変わる。

 

「世の中には大変な人がいる!!」「社会は変わらければならない!!」

自分は安全な場所にいながら、声高に叫ぶのは簡単だ。

YouTubeのアカウントがあれば小学生にもできる。

 

たとえ小さなことでも、実際に手を差しのべる行為にこそ価値があって、

一番エネルギーがいるのだ。

 

 

完璧な聖人なんていないし、ましてや目指す必要などない。

人間だから、時々ポンコツになる。

私はしょっちゅうポンコツになって自己嫌悪の闇だったが、

最近では「人間くさくていいじゃないか」と自分を洗脳している。

 

凡人の私には、お金もないし、社会の仕組みも変えられないけれど、

目の前の人に小さな親切をすることはできる。

せっかくいい映画を観たので、

妊婦と子連れのお母さんには、躊躇せずに席を譲ることを

ここに宣言する。

キャスト

監督:セオドア・メルフィ

出演:ビル・マーレイ,メリッサ・マッカーシー,ジェイデン・リーバハー

           ナオミ・ワッツほか

あらすじ

酒とギャンブルに溺れる不良ジジイ、ヴィンセントは、ひょんなことからお隣に引っ越して来た小学生オリバーの放課後の面倒を見ることになる。行きつけのバーや競馬場にオリバーを連れ歩き、一見ろくでもないことを教え込んでいくヴィンセント。それでも不思議と2人の間には年の差を超えた友情が芽生え、ささやかな冒険の日々が始まった。しかしある事件をきっかけに2人の交流の日々に終止符が打たれてしまう。嫌われ者のヴィンセントの本当の優しさを証明するためにオリバーがとった意外な行動とは―― Amazon作品紹介より

 

 

【映画】わたしは、ダニエル・ブレイク|亡き父に会えた。この映画に心から感謝する。

私はダニエルブレイク

 『優秀な能力の使い道』

 心臓発作を起こして働くことを医者から禁止されたため、

国の援助を受けるため、役所へ申請に行くダニエル。

役所は、パソコンを使えないダニエルに「オンラインの申請が決まりですから」と繰り返す。そして、それを職員が手伝うことは、許されていない。

見かねたある女性職員が、こっそり手伝おうとして上から叱責される。

 

この職員たちは、電気代が払えずに途方に暮れているわけではない。

だから「決まり」を振りかざしていられるのだ。

 

人間的な最低限の暮らしすら許されないほどの貧しさを

好き好んで選択する人はいないだろう。

こうなるとわかっている道を、まっしぐらに爆走していく人もいない。

何十年もまじめに働き、納税してきたダニエルのような人を救えないなら、

なんのための「国」なんだろう。

 

例外はもちろんあるけれど、経済的な豊かさは、「教育の機会」に影響を受ける。

そして、その「教育の機会」は、親の経済力に影響を受ける。

東大生の親の年収は、半数超が950万円以上という報告もある。

学校の授業だけで難関大学に行くのは至難の業だろう。

塾に行き、テストスキルを学び、C判ならワンチャンあるぞなどと

自分の立ち位置を知り、合理的に受験する。

教育にはお金がかかるのだ。

自分の努力だけで勝ち取ったと勘違いしてはいけない。

自分は、努力ができる環境に生まれて幸運だった、ただそれだけだ。

 

そう考えることができれば、「弱者に手を差し伸べる」という斜め上からの

発想にはならないだろう。

 

ダニエルやケイティのように、生活に困っている人は日本にも大勢いる。

幸運にも、優れた教育を受ける機会を与えられた人たちには、

困っている人を困ったままにさせない、そういう仕組みを作ることに

能力を使ってほしいと願う。

 

シングルマザーのケイティを娘のように気にかけ、支えになるダニエル・ブレイクは、

どことなく亡き父に似ている。

「お前のそばにいる。がんばれよ。」と言ってくれている気がして、

何度も目頭が熱くなった。

 

 

キャスト

監督:ケン・ローチ

出演:デイヴ・ジョーンズ,ヘイリー・スクワイアーズほか

あらすじ

イギリスに生まれて59年、ダニエル・ブレイクは実直に生きてきた。大工の仕事に誇りを持ち、最愛の妻を亡くして一人になってからも、規則正しく暮らしていた。ところが突然、心臓の病におそわれたダニエルは、仕事がしたくても仕事をすることができない。国の援助を受けようとするが、理不尽で複雑に入り組んだ制度が立ちはだかり援助を受けることが出来ず、経済的・精神的に追いつめられていく。そんな中、偶然出会ったシングルマザーのケイティとその子供達を助けたことから、交流が生まれ、お互いに助け合う中で、ダニエルもケイティ家族も希望を取り戻していくのだった。

公式サイトより

【映画】きっと、うまくいく|『正しい選択』ではなく、『選択する方法』を学べる映画

きっとうまくいく

自分で選択すること、信じること。

親が干渉しすぎだということに気が付いたのは、大人になってからだ。

「思うままに生きろ」などと言われたことは一度もない。 

子どものためを思い、傷つけたくないから口を出す。

愛情たっぷりの親切心からくる干渉はものすごく厄介だ。

 

今にして思えば、うちの親は自尊感情が著しく低い。

すぐに感情的になるので、それがイヤで「No thank you」が言えない。

自分のことなのに、親を説得するのに莫大なエネルギーを使ってしまう。

そのうち、どうでもよくなった。

こんなことがわかり始めたのは、自分が子育てをし始めてからだった。

 

未来はどうなるかわからない。

実際、20年前の自分に今の自分は全く想像できていない。

自分の価値基準も大きく変わった。

 

普遍的なことがあるとすれば「自分で選択する」ということの価値だろう。

私が息子にできることは、自分の思う「正しい答え」を押し付けるのではなく、

勇気を出すよう背中を押してやることだけだ。

 

というような、決意ができたので、息子に言ってみようと思っている。

おそ松さんに影響されて、ニートになりたいと言っている息子に

多少なりとも突き刺さってくれることを祈っている。

 

キャスト

監督:ラージクマール・ヒラニ

出演:アーミル・カーン, カリーナ・カプールほか

あらすじ

日の出の勢いで躍進するインドの未来を担うエリート軍団を輩出する、超難関理系大学ICE。エンジニアを目指す天才が競い合うキャンパスで、型破りな自由人のランチョー、機械より動物好きなファルハーン、なんでも神頼みの苦学生ラジューの“三バカトリオ”が、鬼学長を激怒させ、珍騒動を巻き起こす。 抱腹絶倒の学園コメディに見せつつ、行方不明のランチョーを探すミステリー仕立ての“10年後”が同時進行。根底に流れるのは学歴競争。加熱するインドの教育問題に一石を投じ、真に“今を生きる”ことを問いかける万国普遍のテーマ。

Amazon作品紹介より

 

 

【映画】ビューティフル・マインド|極力レビューを読まずに観ることをおすすめする感動作。

ビューティフルマインド

実話が基になっていることが、この映画の肝。

25年前にがんで亡くなった祖母を思い出した。

入院先へお見舞いに行くと、いつも、天井に向かって「エア三つ編み」をしていた。

ものすごく楽しそうだった。

担当医は、痛み止めの影響だから心配ないと言っていたが、

時々、「拳銃だから、こっそり捨ててきて。秘密よ。」と、

テレビのリモコンを渡してくるので本気で困った。

農家で生まれ育った祖母は、拳銃なんか見たことも触ったこともないだろうに。

イマジネーションがすごい。

 

現実は、きっと想像もつかない苦労があるのだろうけれど、

この映画を観て、少しだけ祖母を身近に感じることができた。 

キャスト

監督:ロン・ハワード

出演:ラッセル・クロウ, ジェニファー・コネリー, ポール・ベタニーほか

あらすじ

ノーベル経済学賞受賞の実在の天才数学者、ジョン・ナッシュの半生を描く物語。
1947年。ジョン・ナッシュプリンストン大学院の数学科に入学する。彼は「この世の全てを支配できる理論を見つけ出したい」という願いを果たすため、一人研究に没頭していくのだった。そんな彼の研究はついに実を結び、「ゲーム理論」という画期的な理論を発見する。 

やがて、その類いまれな頭脳を認められたジョンは、MITのウィーラー研究所と言われる軍事施設に採用され、愛する女性アリシアと結婚する。政府組織は敵国であるロシアの通信暗号解読を彼に強要し、その極秘任務の重圧に彼の精神は次第に追い詰められていく。

Wikipediaより

 

【映画】紙の月|目隠しして坂道を自転車で暴走する感覚。止まった時が、止まる時。

紙の月

自己肯定感なんて考えるだけ無駄だと思っている私でも

さずがに「もっと自分の気持ちに目を向けなよ」と言ってしまいたくなるほど、

主人公の梨花は抑え込んでいる。諦めているようにも見える。

 

夫は全てにおいて自分のことしか見えていない。この映画で一番厄介な男。

妻がペアの時計をプレゼントした後で「もっと高いものをつけなきゃ」って

ブランドの時計を買ってくる。悪気なく、さも良いことをしたかのような顔で。

妻の戸惑いに気づきもしない。もう最悪だ。

 

光太という大学生との関係も、最初から結末がわかっているし、

常にそれを意識している。

壊れるのは、わかっている。けど、止められない。

 

目をつぶったまま、自転車で坂道を下る感覚だ。

大けがをするかもしれないし、誰かを傷つけるかもしれない。

人生を棒に振るほどのルール違反を犯していることもわかっている。

でも、どうしてもブレーキを握れない。

何かにぶつかって、物理的に止まるまで。

やけくそって、こういう心理状態なのだと思う。

 

同僚も顧客も家族もみんな、好き勝手やっている。好き勝手言っている。

言いたいことを言えない自分は、いつもひとりだけ損している気分になるのだ。

そこで芽生えた「やったもん勝ちじゃん」という感情が

とことん暴走するのは、ちょっと理解できる。

 

いい女ぶらずに、言いたいことを言えれば少し結末が変わったのかもしれないと思う。

フィクションなのに、主人公の梨花にとことん同情してしまう。

 

とりあえず、時計をプレゼントしたのに時計を買ってきた夫には、

「バカなのか?」くらいは言ってもバチはあたらないだろう。

 

キャスト

監督:吉田大八

出演:宮沢りえ池松壮亮小林聡美石橋蓮司大島優子ほか

あらすじ

バブル崩壊直後の1994年。夫と二人暮らしの主婦・梅澤梨花は、銀行の契約社員として外回りの仕事をしている。細やかな気配りや丁寧な仕事ぶりによって顧客からの信頼を得て、上司からの評価も高い。何不自由のない生活を送っているように見えた梨花だったが、自分への関心が薄い夫との間には、空虚感が漂いはじめていた。そんなある日、梨花は年下の大学生、光太と出会う。光太と過ごすうちに、ふと顧客の預金に手をつけてしまう梨花。最初はたった1万円を借りただけだったが、その日から彼女の金銭感覚と日常が少しずつ歪み出し、暴走を始める。

Amazon作品紹介より